Apache

499223

無題 - GeronimoMail URL

2025/11/21 (Fri) 16:47:49

China2030⑥AIも過剰投資?中国、データセンター稼働率30%の衝撃(Asiaウオッチ)

 【NQN香港=戸田敬久】米半導体大手のエヌビディアが19日に発表した好決算が世界の株式市場を大きく揺らしている。人工知能(AI)投資はリスクなのか。市場が疑問を投げかける中、いち早く中国ではAIデータセンターへの過剰投資の問題が表面化している。米国による最先端半導体の供給制限を巡り、火花を散らす中国で何か起きているのか。

 ◎中国AIサーバー最大手、なぜか減収減益

 AIサーバー需要は旺盛なはずなのに、なぜ減収減益――。中国サーバー最大手の浪潮電子信息産業(IEITシステムズ)が10月30日に発表した2025年7~9月期決算では売上高、純利益とも減少した。それぞれ前年同期比1%減だが、25年1~9月期の売上高が1206億元と44%増、純利益が14億元と15%だっただけに急ブレーキぶりが際立った。
 日本の一般消費者にはなじみが薄い浪潮信息は、自社ブランドのデータセンター向けサーバーでは米デル・テクノロジーズや米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)と並ぶ世界有数のシェアを誇る。中でも中国国内のシェアは5割前後にのぼり、顧客にはアリババ集団など中国テック大手が顔をそろえる。山東省政府系の企業で、国家的なネット監視システム「金盾工程」にもサーバーを納入しているとされる。
 市場では、減収減益の理由について「サーバー納入の端境期」との見方があれば、「部品不足」「価格競争の激化」との指摘もある。習近平(シー・ジンピン)指導部からは国内AIビジネスで「海外製の半導体の使用禁止」を命じられる一方、海外メディアは同社がいまだにエヌビディアの半導体を迂回輸入していると報じている。部品不足で高額なAIサーバーの生産が滞っている可能性も否定はできない。

 ◎クラウド大手から受注膨らむも株価は失速

 浪潮信息の決算からは、サーバー需要の旺盛さは読み取れる。アリババなどクラウドサービスを手掛ける企業からの受注が膨らみ、前受け金は315億元と前年同期末の11倍に拡大。仕掛かり中の製品が増加して棚卸し資産も576億元と5割近く増えた。「AI投資の追い風を受けて高成長できる」と中国の証券各社はこぞって買い推奨している。
 それにもかかわらず、株価は10月9日に付けた上場来高値(80.8元)をピークに調整が続いている。米国のハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)から受注した、エヌビディアなどの高性能半導体を使ったAIサーバーの受託生産を手掛ける鴻海(ホンハイ)精密工業とは今のところ明暗を分けている。
 米国でAI投資の是非が議論されている中、いち早く浪潮信息の株価が失速している背景には、中国ではAIへの過剰投資がすでに顕在化していることと無縁ではないだろう。 

 ◎中国、データセンター計画は400カ所 

 中国紙の科技日報によると、24年11月現在で中国のAIデータセンターは約150カ所にのぼり、建設中・計画中は400カ所にのぼる。浪潮信息と同じグループの浪潮人工知能研究院の試算ではデータセンターが保有する計算能力の使用率は30%にとどまるという。
 中国政府は22年、AIデータセンターの重要性を見越して「東数西算」という新たな戦略を打ち上げた。沿岸部の発展した都市のデータ処理需要を、風力・太陽光・水力など自然エネルギーの豊富な内陸部に建設したデータセンターで処理するという壮大な計画だ。
 電気自動車(EV)や太陽光に風力発電設備……。目標に掲げられると、域内総生産(GDP)を増やすために突っ走るのが中国の地方政府の常。絶好の箱物であるデータセンターも例外ではなかったというわけだ。
 前出の科技日報によると、取材に訪れた西部のある都市が22年に郊外で建設したデータセンターのサーバー稼働率は30%未満だった。それでも年間の運営コストは3000万元を超えるという。

 ◎習主席、データセンターの過剰投資を批判

 「なぜ地方政府は横並びで同じ事業をやるのか」。7月18日、中国共産党機関紙の人民日報と国営新華社を通じて、データセンターなどをやり玉に挙げる習国家主席の発言が報じられた。
 その後の影響は明らかにはされていないものの、中国ではトップの発言は重い。地方政府の安易なデータセンター計画には見直しが入ったに違いない。サーバー最大手の浪潮信息の業績にも影響が出る可能性は高い。ちなみに科技日報の報道は7月17日だった。
 ただ、過剰投資であっても、大規模演算を必要とするAI向けの計算能力が足りているわけではなそうだ。中国メディアによると、24年末のAI向け計算能力は90EFLOPS(エクサフロップス、1秒間に100京回の浮動小数点演算を行う能力)と前年から5割強増えた。それでも「23年時点で計算能力はAI需要の半分も満たしておらず、24年はさらにそのギャップが拡大している」という。

 ◎テンセントCEO、AI投資が効果もたらす

 AIが利益をもたらした――。ネットサービスの騰訊控股(テンセント)が11月13日発表した25年7~9月期の純利益は19%増の631億元。同社の馬化騰(ポニー・マー)CEOは「あらゆる事業分野でAIの戦略投資が効果を発揮した」と発言した。ショート動画の快手科技(クアイショウ)やネット検索の百度(バイドゥ)でもAIの業績への貢献が注目を集めた。
 三井住友DSアセットマネジメント香港の佐野鉄司チーフ・アジア・エコノミストは「民間企業は顧客を確保しているためクラウドビジネスは好調」と指摘する。過剰投資の問題の根源は、地方政府や地方のデータセンター運営会社に、計算需要のある顧客を自ら開拓する能力がない点にありそうだ。
 26年から始まる次期5カ年計画で、中国はAIを活用して技術革新を加速し、西側諸国には頼らない「自立自強」を目指す。需要と供給のミスマッチを解消できれば、「今のデータセンター投資は、先行投資であって将来的に過剰ではなくなる可能性もある」(PwCコンサルティングの薗田直孝シニアエコノミスト)。
 AI分野でも米国と角を突き合わせる中国。果たして過剰との懸念があるAIへの巨額投資の果実を得られるだろうか。

名前
件名
メッセージ
画像
メールアドレス
URL
編集/削除キー (半角英数字のみで4~8文字)
プレビューする (投稿前に、内容をプレビューして確認できます)

Copyright © 1999- FC2, inc All Rights Reserved.