無題
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2025/10/02 (Thu) 10:16:51
下げに不慣れな日本株 期初売りに沈む、順張り勢の動向焦点
下期入りとなった1日の東京株式市場で日経平均株価は下落し、前日比の下げ幅は600円に迫る場面があった。国内の機関投資家の下期入りに伴うリバランス(資産配分の調整)に絡んだ「期初売り」に沈んだ格好だ。2025年の日本株相場は調整局面が少なく、下げに不慣れといえる。相場の上昇局面で順張りで買い持ち高を積み上げてきたシステム勢の動向が焦点となる。
◎野村証券でシステム障害
1日は寄り付きから幅広い銘柄に売りが先行した。市場では「期初の益出しの1件ごとの金額は小規模だが、件数が非常に多い」(国内運用会社のトレーダー)、「1日は中国市場などが休場。米政府閉鎖のヘッジ売りが日本に集中した」(外資系証券のトレーダー)などの声が聞かれた。
そうしたなか野村証券のシステム障害も投資家心理に影響した可能性がありそうだ。寄り付き前、複数のバイサイド(投資家側)から「野村証券に発注ができない」との声が出ていた。野村証券の東京証券取引所での現物株の発注シェアは2割程度とみられる。そこにバイサイドが発注できないとなると大ごとだ。「発注を他社に振り替えればいいだけだが、作業的にはかなり大変」(前出と異なる国内運用会社のトレーダー)
野村証券の広報担当者は1日午前、日経QUICKニュースの取材に対し「機関投資家向けのシステムで障害が起きているのは事実。ただ、詳しい状況については調査中だ」と回答した。野村証券はその後、システムがほぼ復旧したと明らかにした。
期初売りは持ち高の評価益を実現益にする多くの市場参加者が取る行動だ。他の参加者が同じ売りなら、少しでも高い株価で売りたいと別の参加者も我先に売る動きとなる。投資家によっては、システム障害がなければ通常の執行で想定された実現益の増減にも影響した可能性がある。
市場では小型株の下落が大型株よりも目立った。相場変動を決める要因「ファクター」では今年に入りアウトパフォームが目立っていた「モメンタム」や「バリュー」が顕著に下がるという「強烈なリバーサルが入った格好で(買いと空売りを組み合わせる)ロング・ショート勢を中心に厳しい展開」(フィリップ証券の増沢丈彦株式部トレーディング・ヘッド)との声があった。9月30日に2026年3月期の業績予想を下方修正した三菱重の大幅安をきっかけに、IHIや川重など防衛関連株が軒並み急落したこともこうした動きに影響した。
◎TOPIXの5%ドローダウンはわずかに1回
今年の日本株は実は調整局面が少ない。東証株価指数(TOPIX)の一時的な調整局面での高値から安値までの下落「ドローダウン」で5%を超える下げを経験したのは春先の1回だけだ。米相互関税の発表をきっかけにした調整で、下落率が大きかったが、この後は5%のドローダウンは発生していない。5%のドローダウンはシステム系プレーヤーが順張りの買いをいったん止める目安とされる。5%のドローダウンは23年と24年は3回、22年は4回あった。
JPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストの推計によると、7月以降の株高局面では商品投資顧問(CTA)などシステム系プレーヤーの日本株先物への買いが急増し「直近でシステム系全体としてのネットロングは88パーセンタイル」と説明する。つまり、足元よりもシステム系プレーヤーが過去に買い持ち高を膨らませた時期は12%しかない。言い換えればシステム系プレーヤーの買いは過去との比較では9合目に到達していることになる。
野村証券の推計によると、外資系証券の日経平均先物のネットの建玉は9月26日時点で9512枚の買い越し。買い越し幅としては24年3月以来、1年半ぶりの大きさだ。野村証券の藤直也エクイティ・ストラテジストは「8月までは売り持ち高の買い戻しだったが、足元では積極的な買いポジションの積み上げに変化している」と指摘する。同時に「株高が短期投資家にけん引されている点には警戒が必要」との見方も示す。
こうしたシステム系の買い持ちが大きく膨らんだ状態は多少のドローダウンの発生に脆弱性が高まっている状態と言える。4月急落後の着実な上昇が突発的なモメンタムの反転で、短期間のうちにシステム系の買い持ち高が吐き出される危険性をはらむ。今年4月や昨年8月の急落は、こうした需給要因が下げに拍車を掛けた面があった。今年の10月相場は投資家の警戒度合いを一気に高める形で始まった。
〔日経QUICKニュース(NQN) 宮尾克弥、張間正義〕