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2025/09/20 (Sat) 09:23:02
米国で株価操縦4倍に AIが対話アプリで暗躍、狙いは中国株
【ニューヨーク=吉田圭織】米国に上場している小型の中国企業を対象にした株価操縦が急増している。犯人はAIボット(人工知能による自動応答)を使って対話アプリ上で虚偽の情報を流して投資家を巻き込み、株価をつり上げるケースが目立つ。証券取引所は売買が乏しい中国企業の上場を難しくする規制案を発表するなど、対策に追われている。
ナスダックが発見した不正案件、7割が中国銘柄
個人投資家向けに収益性を誇大に強調した情報を投稿して株価を釣り上げた後、一気に売却して利益を得る「パンプ・アンド・ダンプ」と呼ばれる手法が増えている。
米連邦捜査局(FBI)によれば、こうした株価操縦の報告件数は2025年に前年同期比で4倍に増えている。
特に目立つのが米国に上場する中国銘柄だ。米証券取引所ナスダックの資料によれば22年以降、株価操縦などの疑いがある取引として米金融取引業規制機構(FINRA)や米証券取引委員会(SEC)に通知したうち、70%が中国銘柄だった。
米サイバーセキュリティー会社のノウ・ビフォーの最高情報セキュリティー責任者(CISO)アドバイザー、ロジャー・グライムズ氏は「全体の7割に上ると偶然であることは考えにくい。組織犯罪の可能性が高い」との見方を示した。
AIボット、金融のプロになりすまし
たとえば中国で電子機器向けディスプレーの製造を手掛けていたとされるオスティン・テクノロジー・グループの株価は6月25日に225.5ドルの最高値を付けた翌日に90%程度下落した。いまでは1ドル台にとどまる。米司法省は12日、株価をつり上げる詐欺を主導したとして同社の共同最高経営責任者(CEO)ら2人を刑事訴追したと発表した。
今夏に目立ったのがオスティンのほか、スキンケアのパーク・ハ・バイオロジカル・テクノロジー、デジタルマーケティングのエバーブライト・デジタル・ホールディングなど6社の中国銘柄だ。5月頃から上昇し始め、6月末~7月末に急落した。投資家の被害額は40億ドル(約5900億円)近くに上るとされる。
被害者の多くはSNS上のネット広告をクリックした後、ワッツアップなどで投資家向けチャットグループに招待される。グループには自称金融アドバイザーや他の投資家が大勢いる。市場の情報を共有するほか、プライベートのやりとりも多い。日常生活の写真を送ってくるケースもある。実際は招待された投資家以外、大半がAIボットとみられる。
信頼感を持たせつつ、これらの中国株の情報を持ち出して投資を促し、株価をつり上げたようだ。
ナスダック、中国小型株の上場制限を検討
米セキュリティートレーニングを手掛けるホックスハントが4月に公表した調査によれば、すでにAIボットは人間よりも24%高い確率で利用者の個人情報を窃取するフィッシング詐欺に成功している。
米国側は対策を強化している。ナスダックは3日、中国の小型企業の米国上場を難しくする規制案を公表した。新規上場時に2500万ドル以上の資金調達を義務づけるほか、時価総額が縮小したら早期に上場廃止させることなどを検討している。
米司法省は専門の捜査チームを立ち上げた。24年11月~25年2月に中国の教育サービス、チャイナ・リベラル・エデュケーション・ホールディングスの株価操縦を主導したとされるマレーシアや台湾出身の人物を3月に刑事訴追し、米政府が約2億1400万ドル(約320億円)を押収した。
グライムズ氏は26年末までに心理的な隙に付け込んでサイバー攻撃に必要な秘密情報を盗んだり詐欺に巻き込んだりする「ソーシャルエンジニアリング」の大半はAIが関わると予想する。当局側もAIを活用するようになり、「今後は犯罪者と当局、一番良いAIのアルゴリズムを持つほうが勝つ」とみる。