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2024/12/09 (Mon) 16:20:05
米国株、年末の大幅安を示唆? 跳ね上がるブラックスワン指数
歴史的な上昇を演じている米株式相場。機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数は年初来で27.7%上昇と、2013年の29.6%を上回り、21世紀に入り最大の年間上昇率を記録する可能性が出てきている。だが、ここにきて警戒すべき動きも表れ始めた。スキュー指数、別名「ブラックスワン指数」の急上昇だ。
6日の米株式市場でS&P500種は反発し、2日ぶりに最高値を更新した。底堅い米経済に加え、景気後退入りを防ぐ米連邦準備理事会(FRB)の漸進的な予防的利下げの方針が維持されているため、株式市場にとって居心地の良い経済・金融環境が続く。
株高が続くなか、米シカゴ・オプション取引所が算出するスキュー指数は5日に173.93と、終値ベースではQUICKでさかのぼれる1990年以降の最高水準となった。6日も168.05と高止まりした。スキュー指数はブラックスワン指数とも呼ばれ、確率は低いが起こると影響が大きいテールリスクへの警戒度を示す。株式市場では同指数の上昇は将来の株安リスクの高まりを反映していると捉える傾向がある。
オプション市場でプット(売る権利)に買いニーズが高まる局面で上がりやすい指数だ。とりわけ満期が近く、行使価格が実勢価格から大幅に乖離(かいり)するアウト・オブ・ザ・マネー(OTM)の安い価格帯のプットが買われるほど、跳ね上がりやすい。日々の変動が大きい指数のため5日移動平均でみると171.06と、今年に入ってからの平均値(147)を大きく上回る。
11月の米大統領選でのトランプ前大統領の勝利を受け、140近辺まで低下する場面があったが、同月後半から急速な上げに転じ、一気に過去最高水準まで上昇した。大統領選以降、株式相場は上昇ピッチを速めたため、近い将来の調整を予想してプットの買いニーズが高まるのは自然な流れとも言える。
米調査会社ビスポーク・インベストメント・グループによると1カ月物のS&P500種のプット全体の価格は4年ぶりの低水準と、ダウンサイドに備える「保険料」が極端に安くなっている。最高値圏で推移する米株式相場でプットの買い需要は強いが、それ以上に相場の下落に対し投資家は鈍感となっており、下落しても下げ幅は限られるとの見方からプットの売り需要が強いことの表れとの見方もできる。となれば、スキュー指数の急上昇は年末・年始の大幅安を示唆しているものではないことになる。
通常、オプション市場ではプレミアムを得ることを目的に個人投資家などは売りから入ることが多いのは日米で共通している。オプションの売りニーズが高いなか、ヘッジファンドなどが極端に安くなったOTMのプットを「宝くじ」代わりに買ったことが足元のスキュー指数の急上昇に影響した可能性がある。なんらかの理由で相場が大崩れすれば、宝くじは大化けする。一方、相場が上がり続けても極端にコストの安いプットだけに「掛け捨て」で痛手は小さい。
「恐怖指数」の米株の変動性指数(VIX)は6日に12.77と半年ぶりの低水準を付けた。ブルームバーグ通信によると米主要株価指数に対し、順方向に2倍などの値動きをするレバレッジ型の上場投資信託(ETF)の資産残高は、指数の逆方向の値動きとなるインバース型の資産残高の11倍と、その比率は過去最高となっている。スキュー以外のほぼ全てのオプション系指標は投資家の慢心を示している。
相場が下がらなければ、20日に迎える株価指数先物や株価指数オプションなどのデリバティブ(金融派生商品)取引の満期が重なる「トリプルウィッチング」に向けて、プット買いの持ち高の解消が発生する可能性がある。こうした動きは市場のボラティリティー(変動率)を一段と低下させることにつながる。年末ラリーのピークはこの局面で迎える可能性が高そうだ。〔日経QUICKニュース(NQN) 張間正義〕